中国の古書『易経』の一節にある「和悦相楽(わしてよろこびあいたのしむ)」からとって名付けられた「相楽園」。コンペにおける必要最低条件は、相楽園への来訪者や近隣の人々が気軽に憩うことができる施設であること。そうしたお題を踏まえ、我々が挑んだ開発コンセプトは「超コンプレックスな神戸の迎賓館」として地域に貢献すること。
歴史に裏付けられた建物の気品と格調を残しつつ、事業としての中核であるウェディング施設として、また海外からのVIPにも喜ばれるレセプション施設として、さらに来園者や近隣の人々が気軽に利用できるカフェとして、そしてそれらを紡ぐ重要コンテンツである「食」を提供するレストランとしても成立する機能とデザイン、そして最も大切な運営力。
それらを実現するためには、一般的な常識に逆行することもメリットとして受け入れる必要があった。例えば、ウェディングにおいて勝ち組の方程式である専用のチャペルを敢えて造らず、「貸切」を謳うことも放棄した。その代わりに神社などでの外部挙式もウェルカムとし、館内では庭園を一望する屋外テラスと、旧ハッサム邸を臨む屋内スペースの両方から選べる挙式スペースを設け、またソフト面でも「持ち込み無料」など自由度の高さと、利便性の高いホテルのような機能を売りにした。
コンペには接戦の末、勝利を収めることができた。